診断・感度・特異度・尤度比
診断は、症状や診察から考えた病気の可能性を、検査などで更新する過程である。検査の「感度が高い」という性質と、陽性の人が実際に病気である確率は同じではない。
まず何を確かめたいかを決める
同じ症状を起こす病気を候補として挙げ、頻度、重篤さ、治療の緊急性を考える。検査前確率は、その人の症状や背景から検査前に見積もる病気の可能性である。検査を増やす前に、結果がその後の判断をどう変えるかを明確にすると、不要な負担を減らせる。
感度と特異度は分母が違う
感度は病気がある人のうち陽性になる割合、特異度は病気がない人のうち陰性になる割合である。陽性の人のうち病気がある割合は陽性的中率という。検査の閾値を変えると感度と特異度が変わることがあり、病期や対象集団、採取方法によっても性能は異なり得る。
架空の1万人で計算する
病気の割合1%、感度90%、特異度95%という架空の条件を考える。病気の100人から真陽性90人、病気でない9,900人から偽陽性495人が生じる。陽性585人中、実際に病気があるのは90人なので、陽性的中率は約15.4%となる。感度90%をそのまま陽性後の確率にはできない。
| 結果 | 病気あり | 病気なし |
|---|---|---|
| 陽性 | 90人 | 495人 |
| 陰性 | 10人 | 9,405人 |
尤度比で確率を更新する
陽性尤度比は感度÷(1−特異度)で、この例では18である。確率をオッズに直し、検査前オッズに尤度比を掛けて検査後オッズを求める。オッズは確率÷(1−確率)であり、最後はオッズ÷(1+オッズ)で確率に戻す。確率そのものを18倍する計算ではない。
この架空例の検査前オッズは1/99、陽性後のオッズは18/99である。確率へ戻すと18/117となり、人数から計算した約15.4%と一致する。人数の表と式は同じ関係を別の形で表している。
陰性や複数検査にも限界がある
感度が完全でなければ陰性でも病気が残る場合がある。緊急性が高く検査前確率も高い場合は、陰性だけで評価を終えない。複数の検査が似た情報を測っていると結果は独立ではなく、尤度比を機械的に掛け続けると確信を過大評価することがある。
確認問題
同じ感度・特異度を仮定した場合、病気の割合が高い集団では陽性的中率はどうなるか。
解答と考え方を見る
通常は高くなる。陽性者に占める真陽性が相対的に増えるためである。実際には対象集団の違いで感度・特異度自体が変わる場合もあり、研究の値をそのまま移せるとは限らない。
医学記事は一般的な学習のための情報です。個別の診断・治療の代わりにはなりません。症状や検査値は背景と経過を含めて評価し、処方薬の開始・中断・変更は担当の医療者へ相談してください。
参考資料・次に読む資料
- MedlinePlus:How to Understand Your Lab Results基準範囲、偽陽性・偽陰性、測定条件の解釈。
- NCI:Cancer Screening Overview検診の評価、偽陽性、偽陰性、過剰診断。
- NCI:Cancer Screening Overview(Health Professional Version)検診の性能、対象集団、効果の評価。記事の人数と計算は独自の架空例。
資料確認日:2026-10-13。