宇宙マイクロ波背景放射
空のあらゆる方向から届く微弱なマイクロ波には、初期宇宙の記録が残っています。宇宙マイクロ波背景放射、略してCMBは、宇宙の温度、物質量、構造の起源を調べる重要な観測対象です。
なぜ古い光が今も届くのか
高温の初期宇宙では、自由電子が光を繰り返し散乱していました。中性原子ができて散乱が減ると、光は長い距離を進めるようになりました。今日届く光は、私たちから遠く離れた領域をそのころ出発したものです。光が宇宙の端で反射して戻ったのではありません。別の観測者も、その位置を中心とした異なる過去の領域から背景放射を受け取ります。
ほぼ完全な熱放射
CMBのスペクトルは約2.7 Kの黒体放射によく一致します。この温度は、宇宙のどこにも2.7 Kの空気が充満しているという意味ではなく、放射のエネルギー分布を表します。膨張によって波長が伸びるため、昔は高温だった光が現在はマイクロ波として観測されます。ガスや恒星の温度は場所により大きく異なり、背景放射の温度と同じではありません。
小さなむらが構造の手掛かり
平均温度に比べて非常に小さい方向ごとの差があり、その模様の統計に初期の密度ゆらぎが反映されています。若い宇宙の物質と光は結びついた流体として振動し、その特徴が角度ごとの強弱に残りました。重力によってゆらぎが成長すると、後に銀河などの構造が形成されます。ただしCMBの一点が、そのまま今日の特定の銀河一個に対応する単純な地図ではありません。
全天画像の色を読む
公開される赤や青のまだらな地図は、微小な温度差を見やすく色に置き換えたものです。赤い部分が可視光で赤く光っているわけではありません。観測には天の川の塵や電波放射、装置の雑音、観測者の運動も重なります。複数の周波数を測り、それぞれの周波数依存性を利用して背景放射を分離します。前景の除去法による不確かさも結果に含めます。
モデルを介して宇宙を測る
温度むらや偏光の統計を宇宙モデルの予測と比べ、通常物質と暗黒物質の量、空間の曲率などを制約します。これらの推定は、採用するモデルや他のデータに依存します。CMBだけで暗黒物質の粒子名を決定したり、宇宙のすべての場所を直接見たりすることはできません。非常に初期の重力波の痕跡を探す研究もあり、銀河の塵が生む偏光との区別が重要です。
確認問題
CMBの色付き地図で、赤い領域は青い領域より大量の赤い星を含む、と考えてよいですか。
解答と考え方を見る
いいえ。通常は背景放射の微小な温度差などを人工的な色で示した地図です。恒星の色や個数をそのまま描いているわけではありません。
参考資料・次に読む資料
- ESA: Planck and the cosmic microwave background背景放射の起源と観測の説明。
- ESA: The cosmic microwave background and inflation初期宇宙のゆらぎ、背景放射とインフレーションの関係。
- ESA: Planck science highlights背景放射の測定から得られる宇宙論上の情報。
資料確認日:2026-10-13。