生態系と物質・エネルギーの流れ
生態系は、ある場所の生物どうしの関係と、水、土壌、光、温度などの非生物的環境を合わせた系です。食物網、物質循環、エネルギーの流れを区別すると、生物の増減が他の生物や環境へ広がる理由がわかります。
生物と環境を一緒に見る
同じ種類の個体の集まりを個体群、複数種の集まりを群集と呼びます。群集と非生物的環境の相互作用まで含めるのが生態系です。川、森林、池などの境界は研究の目的に応じて設定されます。
境界の外から栄養や個体が入り、外へ出ていくこともあります。生態系を完全に閉じた箱として扱うと、上流からの物質供給や移動する動物の影響を見落とします。
食物連鎖から食物網へ
生産者は無機物から有機物を作り、消費者は他の生物由来の有機物を利用します。分解者も有機物を利用し、遺体や排出物から物質を循環へ戻します。実際には一種が複数の相手と関わるため、食物網になります。
雑食動物は一つの栄養段階に固定できないことがあります。また、寄生や共生、競争も関係に含まれます。「食べる側が強い」という順位だけでは、生態系の働きを十分に説明できません。
エネルギーは流れ、物質は循環する
有機物中のエネルギーは生産者から消費者へ渡りますが、各段階で呼吸などに使われ、熱として散逸します。そのため上位の栄養段階へ渡る量には限りがあり、継続的なエネルギー入力が必要です。
炭素や窒素の原子は、生物と大気、水、土壌の間を移動します。物質が循環することと、利用可能なエネルギーがそのまま元へ戻ることは違います。「自然はすべてを完全再利用する」という説明には注意が必要です。
生物の増減は連鎖する
捕食者が減ると餌生物が増え、その餌の資源が減るなど、間接的な影響が生じることがあります。しかし他の捕食者、環境、移動、時間差が関係するため、どの場所でも同じ反応が出るとは限りません。
生産力は光だけでなく、水や窒素、リン、温度にも左右されます。湖への栄養供給が増えた場合も、生産者の増加、その後の分解や酸素消費など、複数の段階を追って考えます。
生態系を調べるときの比較
二つの池で生物の数が違っても、原因が一つとは限りません。面積、深さ、季節、測定法を記録し、長期の変化や複数地点を比較します。観察研究と操作実験にはそれぞれ得意な点と限界があります。
個体数が一時的に変動することと、生態系の機能が失われることは同義ではありません。種の構成、物質の収支、攪乱からの回復など、何を「安定」と呼ぶのかを明らかにして評価します。
確認問題
落ち葉の炭素は再び植物に取り込まれます。落ち葉のエネルギーも、同じ量が循環して戻ると考えてよいですか?
解答と考え方を見る
よくありません。炭素原子は分解などを経て循環しますが、有機物のエネルギーは呼吸や分解で熱として散逸します。新たな有機物の合成には光などからエネルギーを受け取る必要があります。
参考資料・次に読む資料
- OpenStax Biology 2e — 46.2 Energy Flow through Ecosystems食物網、エネルギーの流れ、生産力。(英語。本文・図・練習問題の転載ではなく、関連事項を学ぶための参考資料。)
- 生物多様性条約 第2条 用語生物多様性と生態系の定義を示す条約公式資料(英語)。
資料確認日:2026-10-13。